山岳渓流会 岩遊

雪の回廊


  • クライミング




4月 荒沢岳 前グラ尾根

2015年 4月8日 メンバー豊野会長 福士

今回は新潟県の奥只見湖に近い荒沢岳の前グラ尾根の雪稜と上部のミックス状の岩壁を目指しました。

結果は、朝雪が降っていて天候が悪く出発が遅れたのと、雪の量がありすぎて前グラの岩壁の手前まで来たら時間切れになってしまい、雪稜のみを登って引き返すという結果になりました。

コースタイムは出発時間は朝の7時10分。おおよそ下山時刻は15時10分。

4カ所ロープを出して、3回懸垂下降をし、休憩時間は全部で30分程でしょうか。

上部の岩グラの岩場を全て登攀するのであれば、朝の4時には出発するか途中でテントを張れる場所があるので、雪の量を雪の状態にもよりますが、そこで1泊してから登攀する事になると思います

 

 

天候と雪質

雪の回廊

この山のの前グラ尾根の登攀に誘われてから地図を見てすぐに思った事は、

この尾根の方角が「完全な北面」の斜面

であることが一番最初に印象に残りました。

北面の斜面の積雪は南面の斜面と違い、太陽光が入りにくく安定しにくいという性質があり、その事が登攀にどのような困難さをもたらすのか?

という事が気になりました。

前山
前山を目指して登り始める。
 

 

 

 
南面の斜面というのは、日中に強い日差しを浴びた雪の面が溶けて、夜になるとそれが放射冷却で固まるために積雪が締まって固くなるんですが、北面の斜面はそれがないので安定しにくいのです。

2月に行った谷川岳の西黒尾根で雪洞を掘った時の雪は、融解再凍結を繰り返した雪でしたので、金属製のスコップでもかなり固く、豊野会長も
 

 

 

 

「今までの雪洞掘りで一番固い。」

と言っていた程の固さでした。
 

 

 

 
雪崩の痕
南の斜面には雪崩の痕が見える。
 

 

 

 
クラックの入っている斜面クラックの入った斜面。
 

 

 

 
実際に登山を開始した積雪の状態は前日に降った

新雪の下は「ぬれざらめ雪」

で、これを掘り返しても固くなる事がなく、ずっと濡れて締まらない状態の雪でした。

その分、北面の斜面の不安定な雪質の登攀がどんな感じなのか?という興味とそれが実際に経験できる事にも興味がありました。

 

 

 

 
雪の層
雪はよく見ると層状になっていたが、固くなっている層はなかった。

弱層
ぬれざらめ雪の上に新雪が乗る。

 

 

 

 
道路を挟んで反対側に見える山の斜面には

面発生湿雪全層雪崩が発生

しており、そのとなりにも大きなクラックが入った斜面が見えました。

地形図を見ましたが、雪崩の発生している場所もそれほど傾斜が強くないのです。

北面の岩グラ尾根には雪崩の痕はありませんが、雪崩の発生している斜面は南面ですので、やはり日差しが当たりやすく、雪が緩みやすい事の表れなのでしょうか?
 

 

 

 
なお、雪崩に関する情報は

JAN 日本雪崩ネットワーク

のホームページで、直近の雪崩事故や、現在の山の雪質の調査が発表されていますので、雪山に行かれる際の参考になるかと思います。

JAN  日本雪崩ネットワークのURL

nadare.jp
 

 

 

 
雪崩には破壊力のレベルがあって衝撃圧が

30  kPa 木造の構造物が壊れる
100 kPa 針葉樹の成木が根こそぎ倒れる
1000kpa 鉄筋コンクリートの構造物が動く

と言われており、200kPaを越える衝撃圧では

爆風のみで人が死ぬ可能性

がある。

らしいので、雪崩の破壊力についての認識を十分に認知しておく必要があると思います。
 

 

雪崩が起こる場所には

「発生区」「走路」「堆積区」 に別れます。

自分が立っている場所が例えほとんど平らな場所で、安全に思える場所であっても、そこが「走路」又は「堆積区」に当たる場合があり、発生区が山頂付近であっても標高差850メートル、水平距離2800メートルもの距離を流れて来たケースがある様です。
 

 

雪崩には「地形の罠」と言われる現象もあり、

雪崩が斜面を駆け上がってきたり

、ルンゼの様な場所では被害をさらに大きくする可能性があるので、そうした想定外の事も考えて行動が必要だと思います。
 

 

 

 
天気に関しては悪く晴れたとしてもあまり日差しが見込めずじめっとした感じだろうとも予想していました。
 

 

 

 
前山から前グラへ前山から前グラに向かう。
 

 

 

 
夏の登山道
わかりずらいが、夏道が露出している。
 

 

 

 
前日に少し見た地上天気図は、

太平洋上に非常に長い温暖前線が伸びており、新潟県との距離がおおよそ700~800キロほどの距離だったので、

現地の空にも層状雲の巻層雲か高層雲のどちらかが広がっていて、そこから雪や雨が降る場合、激しくはないが長く降るんだろうなとも予想はできました。
 

 

 

 
夏の登山道2 

 

 

 

 
鎖場を行く
 

 

 

 

はしごを登る
 

 

 

 

帰って来てから再び4月8日の地上天気図のの午前6時から15時までのものを見返すと、日本海側に高気圧があってその高気圧が日本海側に東進して、本州の等圧線の間隔も6時を基点に見るとどんどん広がっており、下山をした8日15時には高気圧が新潟県を覆っていました。
 

 

 

 

ですが、相変わらず太平洋側にあった長い温暖前線の距離は変わらなかったので、高気圧に覆われてはいたが、今回の悪天候の原因の距離が変わらなかったので、荒沢岳は登ったのが北面だったという事のあって晴れる事がなかったのだと思います。
 

 

 

 

1ピッチ目を登る豊野会長1ピッチ目の斜面をトラバースする豊野会長。
 

 

 

 

実際、荒沢岳から車で街の方へ降りて来ると、天気が良く、高気圧に覆われていた事を示すものでした。

さらに新潟県から車で三国峠を越えて群馬に入ると、雨が降っていて、群馬県側の三国峠は非常に濃い霧で包まれていて車の速度を落とさなければなりませんでした。
 

 

 

 

3ピッチ目 はしごが見える3ピッチ目の斜面の雪の下には夏道のはしごが見える。
 

 

 

 

3ピッチ目の雪稜3ピッチ目。雪稜に出る。
 

 

 

 

3ピッチ目 ピッケルでアンカーを取る
3ピッチ目 ピッケルでアンカーを取る。
 

 

 

 

これは、後で見た地上天気図で温暖前線の影響だと示す事がわかりました。
 

 

 

 

 

 

 

 

ルートとその状態

ルートはインターネットで積雪期に行った人の記録を調べましたが、積雪期のこのルートの記録は亡く、行っても大した事がないルートか、マイナーなルートであり情報が全くないのでこのルートが困難なのかどちらかだろうな。と思っていました。
 

 

 

 

3ピッチ目の雪稜の壁4ピッチ目の雪稜の壁。
 

 

 

 

4ピッチ目の雪稜4ピッチ目の雪稜。左側はスッパリと切れているので、十分注意。
 

 

 

 

実際のルートも夏道を忠実に辿り、

はしごと鎖場を登ると雪稜

は始まります。
 

 

 

 

私たちがロープを出したのは全部で4ピッチ。
4ピッチ目 テントが張れる場所?4ピッチ目 テントが張れる場所?
 

 

 

 

5ピッチ目 岩グラの岩場5ピッチ目 岩グラの岩場。見るからに悪そうだ。
 

 

 

 

立ち入り禁止の看板立ち入り禁止の看板があり、岩グラの登攀はここを登る。

 

 

 

 

1ピッチ目は豊野会長が雪の斜面をトラバース

して岩陰にスノーバーとピッケルで支点を取りビレイ。

2ピッチ目の雪壁は私が登りましたが、予想していた通り雪がぐずぐずとして埋まってしまうので右側に細い灌木が出ていたので沢登りの要領でそれを引っぱり、2メートルくらいの高さの雪の上に上がると次の支点をとる太い灌木までほとんど平になっていたので、そのまま歩いて行きましたが、

所々雪がシュルンド状

になっていて崩壊しかねないので注意が必要でした。
 

 

 

 

夏道は岩場をトラバース夏道は「立ち入り禁止」の看板がある岩場をトラバース。
 

 

 

 

雪稜に立つ豊野会長雪稜に立つ豊野会長
 

 

 

 

雪稜を下る雪稜を下る。

 

 

 

 

3ピッチ目は豊野会長がそのまま登ります。ここも上に行くとはしごが雪の下に見えていて夏道である事がわかるのですが、

いかんせん雪質がいやらしいので怖い

です。

雪の斜面を10メートル程登ると、稜線上に出ますが

いやらしい雪質でナイフリッジ状になった稜線はさらに所々崩れていて、崩れない様に注意して歩かなければいけません。
終了地点で豊野会長がバイルとスノーバーで支点を作っていてビレイをしていました。
 

 

 

 

3ピッチ目 灌木に下る3ピッチ目 灌木を目指して下る。
 

 

 

 

3ピッチ目の終了地点には灌木がありましたが、腐っているのか、途中で折れていてこれのみに支点を取るのは怖い感じです。

4ピッチ目は先が見えない雪稜を私が2メートルほど登ると、ほとんど平になっていて雪質も悪くなく、夏道の登山道に到着して灌木に支点を取って終了です。

ここは全くコールが聞こえなかった

ので、笛の様な物を用意しておいた方が良いと思います。
 

 

 

 

4ピッチ目を終えると、時間は13時半になっていたので、

本来ならばここからが本番でミックスの岩が更に3~4ピッチ程ある様ですが最初の雪稜で時間が大幅に取られてしまったので、我々はここで切り上げました。
 

 

 

 

3ピッチ目 懸垂下降3ピッチ目 懸垂下降の準備。
 

 

 

 

過去3~4回この時期にこのルートに来ている豊野会長曰く

今年は雪が多くて今までで一番大変

だったと言っていました。

恐らく、雪の少ない時期には通過した雪稜はロープもほとんど出す事なく、すたすたと歩いて来れる場所もあるのではないかと感じました。

次回このルートに来る時は、鎖場とはしごがあってそこを登りきった後、1ピッチ目の雪の斜面をトラバースする手前と4ピッチ終了の岩グラの手前あたりにテントが張れるのではないかと思いました。
 

 

 

 

3ピッチ目 懸垂下降23ピッチ目 懸垂下降。

 

 

 

 

登ってきた道を下降するのですが、

雪がぐずぐずなので注意が必要

です。

3回懸垂下降をしましたが、最初の2回は灌木3回目は夏道の登山道のロープが張ってある大きなピンを利用し懸垂をしましたが、50メートルロープがいっぱいだったので、ロープは50メートルのものを用意した方が良いと思います。
 

 

 

 

2ピッチ目 懸垂下降2ピッチ目 懸垂下降。
 

 

 

 

総合的な感想は、雪質が悪くだましだまし登る所が多くあり、

シュルンドの通過や雪面で支点を作る技術も必要

で、登攀技術の種類は違いますが、今まで行った八ヶ岳の冬の岩稜とかにはないいやらしさが満載のルートでした。

岩グラの岩場には登れませんでしたが、北面の雪質とマイナールートの面白さが味わえたので満足しました。
 

 

 

 

1ピッチ目 懸垂の支点1ピッチ目 懸垂の支点。
 

 

 
 

 

 

 

 

ロープワークの研修

15時くらいに道路が見える場所にまで下山して来て時間があったので、会長から

ロープワークの研修をしてもらいました。

ガルダーヒッチ(アメリカ式)、ロレンソ(イタリア式)、ビエンテ(フランス式)の引き上げと引き下ろしとテンションがかかった時の解除方法、
ATCガイドを使った負傷者の引き下ろしと途中停止、
ATCガイドの懸垂下降時の途中停止、
シングルロープで懸垂下降をした際に細引きとワイヤーゲートカラビナを用いたカラビナとメインロープの回収方法

などを教えてもらいました。

 

 

 

 

1ピッチ目 懸垂下降

 

 

 

 

やはりムンターヒッチが一番基本的で引き上げ、引き下ろし、懸垂下降にも使えるので良いと思ったのですが、ムンターヒッチは結び目が反対に返るので、これも操作に慣れないとややこしくて難しいと言っていました。

上の技術は何ヶ月前に本で各20回くらい練習しておいたのですが、やっぱり時間が経つとできなくなるものです。

これらの技術は中途半端に覚えるとかえって危ないので、いかなる状況でも間違える事なくできる様に

日々の練習が必要だと感じました。
 

 

 

 

 

 

 

 

今回の豊野会長のお言葉

 

 

 

 
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回、豊野会長は「OCEAN PACIFIC」と書かれた見慣れない手袋をしていると思ったら、どうやら水が沁みて来るらしく、
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱり拾った手袋はダメだなあ~。」
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と拾った手袋のグチをこぼしていましたので、
 

 

 

 
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

拾った手袋は水が沁みて来やすいので注意

が必要だと思います。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA







Pagetop